【特集】防ぐ取り組みは― 「ローン・オフェンダー」対策
2025年12月17日(水) 19:39
ローン・オフェンダー(LO)は、テロ組織などと関わりがない中で過激化した個人のことです。近年は社会への不安や恨みなどを募らせ、不特定多数に危害を加える事件も発生していて、県警は対策の強化を進めています。

県警は去年5月、本部にLO対策事務局を設置し、今年6月からは各警察署にも対策部署を設けて、情報を集約する態勢を整えました。
11月、県警本部では関係部局が集まって情報共有を図る会議が行われました。
対策強化の背景には、安倍元総理への銃撃事件や岸田元総理への爆発物の投げつけなどがあり、集まった人々にも危害が及ぶ恐れがありました。未然に防ぐことが重要ですが、組織と関連なく個人で動くため前兆の察知が難しいと言います。
県警本部警備1課の下野憲雄・総括管理官は「一つひとつの情報は不審者につながらないことも多いが、いくつか積み重なることによって不審者につながることが過去の例にもある。ゴミ捨て場に大量の薬品の空瓶が捨ててあるとか、近所から頻繁に火薬のような臭いがするとか、工場でもない所で金属音がするとか、普通でないような動きがあれば知らせてほしい」と呼びかけていました。この日は、対策部署に所属する捜査員が毒物や劇物を取り扱う事業所を訪れました。
不審な購入者のチェックポイントなどを伝え、実際に購入しに来た場面を想定した啓発も行いました。

捜査員は、不審な購入があった場合はすぐに警察に連絡するように伝え、事業所の社員は「背の高さとか、どっちに逃げたかというぐらいだが。実際に来た時に、そういう対応したらいいのかなと。あらためて戸締りや盗難などいっそう気を付けないといけない」と話していました。
専門家は、個人を過激化させる背景には経済的な困窮や、家族問題による孤立、宗教や人種による差別などがあると指摘します。

日本大学危機管理学部の福田充教授は「自暴自棄になった状態で無差別に人を殺してしまうような事件が近年増えている。テロや犯罪を起こす原因は何かということをきちんと考えていく必要があると思う。経済的困窮や差別から、社会的に孤立しないように個人を見守っていく。そういった個人をどうやってケアしていくのか発生を防ぐ根本的な対策になる」。
私たちの安心・安全を守るためにも社会全体で考え、議論していくことが今、求められています。